2014年版『新・戦争のつくりかた』によせて                       ~話すことから、何かが始まると信じて~

『新・戦争のつくりかた』p33-35 より

絵本『戦争のつくりかた』は、ジグソーパズルのようなものです。

 

それぞれのページには、お金の話だったり、教育の話だったり、安全

保障の話だったり、報道の話だったりと、一見ばらばらな話が無造

作にならんでいます。しかし、それらをピースとして注意深く見くらべ、

組みあげていくと、やがてひとつの大きな絵になります。

 

2004 年5月3日、ひとりの人が、新聞やテレビで報道される“パズル

のピース”に漠然とした不安を感じ、試しにそれらを並べてみたのが、

この絵本の原案です。浮かびあがった絵に驚き、わかってくれそうな

友人たちに本の形にしてメールで伝えたところ、「自分も同じ不安を感

じていた」という声がいっせいにあがり、連日、100通を超えるメール

が飛び交うようになりました。そして2 週間。年齢も職業も住む地域も

異なる20人あまりが、それぞれの生活実感をふまえ、内容や文章、

法律の裏付けなどについて率直な議論をかわし、この絵本ができ

あがりました。

 

あれから10 年がたちました。その間に世の中は少しずつ変わって

いき、当時はぼんやりしていた、どこかおかしい感じが、だんだんとはっ

きりした輪郭をとりつつあることに、多くの人が気づき始めています。

いくつかのページを裏付ける、当時はまだ法案だったものが、法律とし

てつぎつぎに成立しています。また、10年前には計画でしかなかった

活動が、今では実際に行われるようになっています。それらを目の当

たりにして、大きな不安を抱きながらも、わたしたちは「まだ間に合う、

できることがきっとある」と考え、そのひとつの試みとして、この改訂版

を出版することにしました。

 

今回、改訂版を出版するにあたり、内容にも手を加えるべきか検討し

ましたが、「60年ちかくまえに、『戦争しない』と決めました」という部分

も含め、本文にはいっさい手を加えないことにしました。その代わり、

各ページに対応した法律の条文などをすべて見直し、情報を最新の

ものに差し替えました。さらに、それぞれのピースを時系列で読み解く

ための関連年表と、地理的に読み解くための地図を、新たに追加しま

した。見直しをはじめてみると、条文の資料部分に追加しなければな

らない法律やできごとは思いのほか多く、その量は旧版の3 倍にもな

りました。

 

資料作成のためには、白書や国会答弁など、さまざまなジャンルの膨大

な情報も読み解く必要がありました。そうしたものを読んでいくうちに、

なぜそのピースがそこにあるのか、それらはどうやって結びついてい

るのかも、少しずつわかってきました。

安全保障、経済、マスコミ、教育、地方自治、エネルギー、食物……。

ふだん、わたしたちが、それぞれ違うできごととして、ばらばらに受けと

めていることは、じつはすべて政治につながっています。一つひとつ

のことがらを組みあげた大きな絵がどんなものなのか、その絵を描い

ているのは誰なのかに、わたしたちはもっと関心を持つべきなのかも

しれません。

 

見えない大きな力が、わたしたちの暮らしをどこへ連れていこうとして

いるのか。

 

自分自身の未来を誰か他の人に委ね続けることを、そろそろやめる

時期に来ているのではないでしょうか。自分や家族、次の世代、郷土、

そしてこの世界を大切に守り育んでいくにはどうすべきか。一人ひとり

が自分で考え、一歩踏み出して自分自身の大きな絵を描いていけるか

どうかに、未来はかかっていると思います。

 

いまこの国で描かれつつある大きな絵を眺めてみて、「この絵はな

んだかいやだ」「このピースはどこかおかしい」。もしもそう感じたら、

口を閉ざさず、あきらめず、どうか周りの人たちと話してみてください。

話すことから、なにかが始まると信じて。

そのとき、この絵本が少しでもお役に立てば、なによりうれしく思います。

 

2014 年7月

りぼん・ぷろじぇくと